高校卒業後の進路選択
ひとことに発達障害と言っても、その特性は千差万別。
今回は発達障害のお子さんの進路選択についてお話ししたいと思いますが、私がいつもこのお話しをする度に、辿りつくのは「個々の特性に合った進路を選ぶことが何より大切」ということです。
「特性」というと「発達障害の症状」と捉えがちですが、要は「一人ひとりの個性」ですね。
そう考えると、発達障害があるからその特性に合った進路を選ぼう…ということではなくて、健常者であっても自分の個性に合った、または個性を活かせる進路を選んだ方が、結果的に幸せな生活を送れることに繋がるのです。
私がかつて全日制高校で進路指導をしていた時の経験と、就労移行支援(国の福祉サービス)で就職支援をしていた経験、さらには現在勤めている通信制高校での実情を踏まえてお伝えしたいと思います。
まずは現状を知って理解すること
お子さんの心と身体の状態は、今どんな感じですか?
自主的に学ぶ意欲はありますか?
登校はできていますか?
少し先の未来を考えることはできますか?
どんな場面が苦手ですか?
進路を決めるにあたり、まずはお子さんの現状をしっかり把握することが大切ですね。
高校卒業後は主に3つほどの進路が考えられるかと思います。
①大学や専門学校への進学(留学、浪人を含む)
②就職(起業やフリーターを含む)
③就労移行支援や自立訓練などの福祉制度の利用
①か②を選ぶ際には、通学通勤できるだけの体力はあるのか?
自ら人と関われるスキルを身につけているか?
苦手な場面での対処法を自分なりに持っているのか?
不登校や引きこもりだった期間が長い場合には、体力も著しく低下している可能性があります。
また、久しぶりに乗る電車やバスで人に酔ってしまったり、閉ざされた空間に不安を感じ、パニック障害を発症してしまうこともあります。
お子さんの心と身体の状態が今どんな感じであるのか?
まずはここをじっくり観察してみましょう🌷
本当に「進学」ですか?
大学全入時代ということもあり、「高校を卒業したら大学進学」と考えることが一般的となってきていますが、ここは一度立ち止まってじっくり考えていただきたいところです。
ここからは、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)を取り上げますが、それぞれの特性の程度や困難の現れ方は人それぞれ異なるという点を前提としてお読みいただけたらと思います。
まず、自閉スペクトラム症(ASD)の場合、主にコミュニケーションとこだわりの強さが困りごととなる場合が多いようです。
一見そつなくコミュニケーションを取れているように見えても、字義通りでしか理解していなかったり、相手の気持ちを汲むことが極端に苦手な傾向にあります。
最近の大学は、授業内でペアやグループを作り、プレゼンをすることがとても多くあります。
親しいわけでもない人と一緒に一つのゴールに向かって協力しあうという作業は、コミュニケーションが苦手なASDの人にとっては非常に負担が大きいことです。
実際に私がかつて勤めていた大学でも、ASDの特性が強めにある学生はグループワークを嫌い、欠席が続いたことで結果的に自主退学をする学生が多くいました。
そしてADHDの場合はどうしても不注意になりがちなので、レポートの提出期限が守れなかったり、発表する範囲を間違えたりすることが多く、そういった失敗体験を重ねることでどんどん自己肯定感が下がっていきます。
失敗をしないことに必死で、人より何倍ものエネルギーが必要となります。
その結果、うつや統合失調症といった別のメンタル不調を引き起こしてしまうことが少なくありません。
大学も専門学校も、中学校や高校のように先生が個別対応してくれることは基本的にありません。
学生課や教務課といったところで合理的配慮について相談できる窓口はありますが、人前で話すことが極端に苦手なのにプレゼンをしなくてはならないとか、大人数の中にいるとストレスを感じるのに100人以上が同じ空間で学ばなくてはならないとか…
発達障害を持っている人にとっては、私たちの想像を遥かに超える負担を抱えることになるのです。
大学は”4年間”と比較的時間に余裕がありますが、専門学校の場合には専門的な知識を基本的には2年間で学ぶので、かなりハードスケジュールとなります。
お子さんの”ニガテ”をじっくり見てみましょう
得意or不得意に凹凸があるのが発達障害なので、凸の部分を活かせると、本当にイキイキと過ごすことができます。
(これは発達障害がない場合でも言えることですが…🌟)
凹の”へこんでいる”部分を平らにしようとせず、凸の部分を伸ばしていきましょう。
ニガテを克服するのではなく、ニガテを知ってそのニガテと上手につきあっていく方法を知る方が、心身ともに健康で過ごせます。